この話は第三者の視点で語ったほうが面白そうですので今回はまずそんな視点から。
いつもは割と淡々と仕事をし、雑談や冗談にも乗ってきて、どんなに忙しくても何か聞いたら懇切丁寧に教えてくれたりお手伝いもしてくれる半野良さんですが、この日は何か変です。笑顔は消え周囲をほぼ無視状態で仕事をしています。顧客対応はさすがにそれなりに明るくしていますが、電話を終えると表情が厳しいです。
どうもイライラしながら仕事をしているらしく、ちょっと職場の雰囲気も半野良さんを中心にピリついています。当の半野良さんはそんなこと気にもせず、険しい表情で仕事をしています。
聞きたいことがあるので声をかけたら「急ぎでないなら明日にして。もしくは自分で調べて」と言われました。めったにそんなことはないのにどうしたのでしょう。
そして終業時刻。いつもは雑談しながら帰り支度をしたりする半野良さんですが、終業前から帰り支度を始め定刻きっちりにタイムカード押してさっさと帰ってしまいました。
何か仕事の上でイライラすることでもあったのだろうか。翌日朝一番で上司が半野良さんを呼び、話を聞きます。何かあったのか、と。
さて半野良さんの答えは何だったでしょうか。
「仕事が多い中、歯が痛くて終業直後に歯医者に行かなきゃいけなかった」です。
痛いし痛み止め買うヒマねえしやるべき仕事はやっとかなきゃいけないし定時で職場出ないと予約に間に合わねえし何より歯医者行きたくないけど早く痛みから解放されたいし。それを見越して仕事処理しているから笑顔や余裕なんてあるわけないですよね、と「笑顔で」答えました。
「それならそうと言え。職場の空気が悪くなる」と言われましたが、誰にも聞かれないことをペラペラ「俺今日歯が痛くてさ」なんて言えるような余裕があるわけがない、と。
そんな日もありますよ。人間だもの。