半野良にはある習性があります。仕事が忙しくて疲れてくると、スケジュールを前倒ししてでも「空白の一日」を作りたがります。年次有給休暇を取るためです。
ある時「疲れたので年次有給取ろう」と思い、ある金曜日を意識してスケジュール調整を始めました。そして首尾よく「空白の金曜日」ができるかなと思えてきた矢先…
「半野良君、有休を取ると言うことはこの金曜日はヒマだろ。有休入れないでくれ。この日はみんな予定があって外出をする。何かあった時に対応できる人がいなくなる」
さて問題。この場合有給休暇に対する時季変更権は発動できるでしょうか。
時季変更権の法的根拠は労基法第39条5項ただし書き「ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」です。確かにある部署を担当する社員がいないまたは極端に少ないと業務の正常な運営を妨げます。
ですが、その「妨げる場合」の中身が抽象的、この場合だと「何かあった時に困る」という程度のものでは発動の根拠としては「薄い」です。だって何もないかもしれませんし、何かがあったとして「即時その場で必ず対応する必要がある」なんてことはまずありません。別に原子炉つついているわけじゃないんですから。
時季変更権発動の条件として「具体的な支障」は必要とされます(名古屋近鉄タクシー事件)。さらに言えば、もし具体的な支障が明確に存在する場合でもまず他の社員の予定を調整させるべきかもしれません。
と言うわけで半野良社労士として「牙をむく」ことはできたわけですが、私の答えは「はあ、そうですね」でした。そして、私でないと対応できない仕事や事態はついに起こらずじまいでした。
なぜ牙をむかなかったのでしょう。やっぱり、世の中「法律論より感情論」なんですね。法律や判例振りかざして有休取得の正当性をねじこんだところで疲れるだけだし忠誠心がないと思われる(実際無いんですけど)だけです。そこまでして有休取る理由もなかったですし。
世の中、そんなもんです。